レイン→ムーン

 
「……わかった。じゃあやっておくよ。…………お代は良いから、…………遠慮しなくて結構。…………それじゃがんばってね〜」
 受話器を置くと、近くに設置してあったパソコンのキーボードを叩く。
「これで完了っと」
 エンターキーを叩いた。
「何してるんですか? 穐さん?」
 すると家の中から一人の女性が現れた。穐の奥さんである高井茉莉だ。
「ん〜、ちょうどいいや。茉莉さん。ちょっとテレビつけてくれる?」
「…………いいですけど…………」
 穐とは反対側にあるテレビの主電源を押す。テレビは七時の番組の前で現在はCMを流している。
「七時になると出てくる左上の時刻に注目」
「はぁ…………」
 生返事で頷きながら、テレビの左上、時刻がデジタルで表示される場所を中止する。
「5……4……3……2……1」
 七時と共に番組が始まる。しかし
「あれ?」
 一瞬表示されたデジタルの時刻。その時刻は
「七時じゃない…………」
 よく確認しようとしたがその表示は直ぐに消えてしまう。しかし茉莉の目は確かに七時前の時刻が表示されているように見えた。
「どうやら成功したみたいだね」
「どういうことですか?」
「うむ。今日の依頼で手に入れた奴なんだけど原子時計を狂わせる装置」
「…………何でそんな物を?」
「精密射撃に必要なのは実は誤差のない時計なんだよね。時計の動きとリンクさせることでピンポイント爆撃を可能にする。米がどうして正確な時計が欲しいかと言えばこの精度をより上げたいからなんだなぁ」
「…………ですから穐さん。どうしてそんな物を手に入れたんですか」
「恋する乙女からもらったの」
 そう言って穐はにやりと笑った。

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