ホワイト→ウェスト

 
 無音の静寂の中、二人はそこにいた。一人は毅然と立って銃口を見つめ、そしてもう一人はその銃を掴み僅かながらだが驚嘆の表情を浮かべている。
「…………もしかして、気づいてた?」
 銃口を向けていた男、高井穐は銃を持ち上げた。
「まあ、およそは」
 銃口を向けられていた男、西村は呟く。
「どこら辺から?」
「最初の爆発から怪しいと思ってました。高井さん、あれだけ同じドアがあったのに結局爆発させたのは俺の部屋だけでしたから。それで途中カマをかけて適当にでっち上げた地図を見せたんですけど結局迷わずここに来ましたし」
「あ〜あれか。しまったなぁ。全然見ていなかった」
 そう言う高井の声に特に落胆の響きはない。
「じゃあ、君を殺さないと言うのが分かったのは?」
「直前ですよ。前線に立たない俺でもセイフティーロックがしてある銃くらい分かります」
「ハハハ。慣れない武器は使うもんじゃないね〜」
 大声で笑って高井は肩をすくめた。
「で、高井さん。あなたは一体何ものなんですか?」
「ん? いや〜依頼されたんだよ。ハッカーという存在だけを殺害するようにってね」
「分かりませんね? そんな意味のないことをして何がしたいんですかその依頼人は」
「さあ? 恋する乙女の思考回路なんて僕にはわからんよ」
「…………ちょっと待って下さい。その依頼人って…………」

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