怪異いかさま博覧亭 第一巻
著者:小竹田貴弘
発行誌:月刊ComicREX

別にこれを始めるために買ったわけではないのですが、
久しぶりに色々と漫画を買った中で特に気に入った一冊があったので、
今回はそれを紹介します。


見せ物小屋絵巻


ストーリーは江戸時代見せ物小屋など多くの娯楽があった両国を舞台に
売れない見せ物小屋にいるこれまた奇抜なキャラ達が騒ぎを巻き起こす
感じです。

この「見せ物小屋」というのが良いですね。現代ですと本筋の
見せ物小屋というのはもう一つ、二つしかないらしくて、今だと
見ることもできない。そんな見せ物小屋を舞台にした物語ですが、
舞台そのものに活気があり、周りの人間も悲観が無く、
現実だとどこかおどろおどろしい見せ物小屋がまるでどこかの
テーマパークのような雰囲気を漂わせてとてもにぎやかです。
なんというかこの見せ物小屋ではなく、キャラクター達を見てもらいたい
といった感じに思えますね。

キャラクター

主要登場人物の紹介〜

榊(さかき)

博覧亭の主であり、売れない見せ物小屋にした張本人。
三度の飯より妖怪好き。そのため前の主が死んで
主を継いだ時、軽業、手妻(手品)の類は全て止め、
妖怪の展示に執念を燃やす。もちろん妖怪なんて滅多に
いないので、いつもは「オオイタチ」みたいなネタばかり。
幼少より見せ物小屋で過ごしたため上記の軽業、手妻は
一通りこなせるが、あまりやりたがらない。また、小さな
頃に死にそうな出来事があったらしく白髪になってしまっている。

典型的な駄目店主。自分の趣味に見せ物小屋を改変して
それで全く売れていない。実のところ博覧亭には
妖怪であるそろばん小僧の「柏」と
ろくろ首の「蓬」(それぞれ後述)がいるのだが、
それぞれ「手妻」「身体的特徴」と切り捨てて
しまっている。妖怪好きのためにおどろおどろしいもので
ないと妖怪と認めないそうな。しかも彼が着ている羽織は
「小袖の手」と呼ばれる袖から手が出る九十九神。それすら
「カラクリ」と評しているのだから妖怪には縁があるが
彼の思う妖怪に出会うにはかなり大変そうです。
ただ機転の早さと懐の広さは本物。何だかんだで憎めない人です。

蓮花(れんげ)

一応この漫画のヒロイン。貧乏絵師で博覧亭に絵を売っている。
元々博覧亭の前の主の娘で絵師として修行の三年間の間に主が亡くなり、
本来なら彼女が博覧亭を継ぐはずだったのだが、絵師を目指していた
彼女はそれをあっさり榊に譲ってしまった。
ただ貧乏絵師なので、よく博覧亭に来ては飯をたかっている。
大飯ぐらいで貧乳。非常にそのことを気にしており、
意識を乗っ取られているにも関わらずそのことを指摘された時には、
もはや本能で相手を殴りつけていた。

基本性格はセクハラ親父。女性的なところが一切無いところが
いわば彼女の特徴でしょうか。他の面々があまりにも個性的
身体特徴がある中で唯一まともな部類の人。このまま影が薄く
なることだけは避けて欲しい。貧乳と罵ると殴られるのは
大好きなネタなので彼女は好きなのですがw

柏(かしわ)

博覧亭の番頭。元々は地縛霊だったのがソロバン小僧に昇格(?)し、
現在は博覧亭の経理を一手に任されている。
何もないところからソロバンを出す能力を持っているのだが、
榊からは手妻と言われており、納得していない。
見せ物小屋としての経営は全くで、替わりに内職の方が順調であることにも
納得いっていない。


身体的には非常に特殊だが、他キャラの突っ込み役。その上
全キャラ中最も常識的な人(?)なので、現状を非常に憂い、
いつも主の榊に進言している。しかし、本質的には榊を信頼しており、
彼の命令に大抵は従っている。
彼との出会いには色々あったようだが、その話は今後のことに
なりそうです。

蓬(よもぎ)

ろくろ首。ただし榊から「それは身体的特徴」と言われ、
妖怪であることを否定され、現在は博覧亭の家事全般を
任されている。家事手伝いが大好きで素直で明るい娘。
しかし、過去にはろくろ首であるがために過去はずいぶんと
悲惨であった。箒に目がないようで、貴重な箒を目にすると
性格が変わってしまう。

榊から妖怪扱いされないことから段々自分も
「妖怪ではないのでは?」と順調に洗脳されている。
彼女の過去は今巻で明らかになりますので、そちらで。
家事能力はかなり高いようでそつなくこなしている様子。
その上相手を気遣うことも多く、奉公人としてはかなり
優秀のようです。一家に一人欲しい娘w

八手(やつで)

最近博覧亭に仲間入りすることになったくの一。
身体的能力に優れているが、精神的に未熟な部分があり、
妖怪、幽霊などをみると即座に混乱状態に陥る。
獺(かわうそ)のゴマとは常に一緒。
手先が器用なようで、博覧亭の主な収入である傘張りに貢献している。

くの一としての能力は優れているようだが、
如何せん精神的な弱点からどうしてもドジっ娘に見える不憫な子。
榊との出会いの時、獺のゴマと出会った。彼女の話も
今巻で明らかになるのでそちらをご参照ください。
たぶん、登場キャラヒロインの中で最も巨乳。
その上世間知らずな部分があるので、その手の話になると
とたんに顔が赤くなる。う〜ん、萌え要素が多いw




総称

江戸の活気そのものを物語にしたと言えばいいでしょうか。
とにかく暗い話も全てのキャラの明るさや両国という場所が
笑いにしてしまう感じです。第二話なんて吉原の女性が
死んで幽霊になった話で、味付けが変わればそれこそ怨念の
一つになってもしょうがないのですが、幽霊も周りもそれに
関してほとんど悲観がない。人によってはリアリティがない
なんて事になるかもしれませんが、でもこの物語はやはり
見せ物小屋なのでしょう。けっして泣かしたりするものではなく、
驚かせ、笑わせるのが仕事。それを忠実に再現したと言えば
いいのだと思います。

ただ、これを読む際に注意が必要なのは第一話が本当の
第一話ではないということ。そのため僕は最初を読んで、
「あれ〜タイトル変わって新装開店した奴なのかな?」と
思ったのですが、そうではなく、本誌一話の前に読みきりとして
「序章」があったわけです。この序章は巻末にあるので、
それを読んで初めて全てが理解できた感じとなります。
だからもしこれを読むことになったら一度は「あれ〜?」と
首をかしげながら読んで頂き「あ、そういうことか」と
二度目を読んでいただいた方がいいかと思います。

さてさて、皆様も一度「いかさま」博覧亭、ご覧いただければと
存じますw

評価:★★★(3 五段階評価)

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